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FireFire
好き勝手描いたりしてるブログです。 気侭に書いたりしてるので、更新は不定期です。 多分まったりのったり。 初めての方は about を参照くださいませ 拍手はお気軽にどうぞ^^ お返事もここで致します~!
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2024/05/07 (Tue) 12:11
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2010/01/03 (Sun) 10:52
新年あけましておめでとうござーます!!

パラレルの続きでございます。

※閲覧の前に説明書などをご覧の上、内容を確認してからの閲覧をお願い申し上げます。



 

cross 2













簡単な自己紹介の後、用意された席はシンラはルルーシュの隣、ライはスザクの隣だった。
 わざわざその辺も考慮してくれたのだろう。勉強道具は全部ミレイが用意してくれていたのですぐに授業に入る事が出来たが、内容を聞く限りではその内容を理解できないという程の問題は出てこなかった。
 寧ろ簡単すぎる部類に入るお陰でノートには必要最低限の要項を記入するだけで事足りた。
 その様子を隣のルルーシュ、スザクは驚いた目で見ていた。
 そして休み時間に入ると、移動教室の為に移動しながらその事を問われた。
「……お前達は今の授業をアレだけしか書いておかないで理解したのか?」
「あれだけ? ああ、先程の授業の事か? ノートに留める程の事は大してなかった気がするが、そんなに重要な事があったか? ロード」
「いや、私は半ページも満たなかったと思っているが……シンラは?」
「公式の作り方くらいで十分だろう、と思ったが念には念を入れてそのくらいは」
「凄いな……僕なんか分かるまで図書館とか通い詰めなのに、そんなに早く理解しちゃうなんて」
 スザクが感嘆の声を上げる。話によればスザクは最近になるまで学校に通ったことはなかったそうだ。
 とある人物の協力を得ての編入だと聞く。それまで積み重なるものがなければ、勉強は相当な努力を必要とするだろう。
 対してルルーシュは勉強に関しては問題はなさそうだ。見た目からして頭を使うタイプなのだろうと判断する。
「必ず答えが用意されているものなのだから、焦って読み解く事はない。制限時間があるわけでもないものなら、徐々に理解を深めていったほうがいいと私は思う。……しかしスザク、君は努力の人なのだな」
 ライが感心したように口にするとスザクは「そうかな」と謙遜をしつつも嬉しそうに表情を綻ばせる。
「……ふむ、記憶喪失ではあるが日常生活についての問題はない、という事か。寧ろ学業については基準水準が高いようだから心配はなさそうだな」
「学園の中だけでの生活なら問題はないが、日常生活については問題ないとは言い切れない。何しろ一文無しだし、この界隈の情報も何もないからな」
「そうだな。俺で良ければ租界を案内してもいいが」
「それは助かる。是非お願いしたい」
 ふと気がつく。何やら先程から視線を感じていたのだが、その大半が女子から向けられているという事に。
 何故だ、と思っていると小声で己らの容姿を褒める声が聞こえた。
 そういう事か、と気にすることはないものの、どうやら受け入れられていないという事でない事に一応の安心を得られた。

「っあー!! 疲れたー!!」
 ベッドに大の字に倒れこむやいなや、シンラはそう叫んだ。
「シンラ、制服が皺になるよ。ちゃんと脱いでから寝ないと」
「へいへい。……しかしこの部屋、居住のためのものじゃないとはいえよくもまぁここまで快適に仕上げてくれたもんだな。流石は金持ちってか」
「ミレイさんには感謝しないとね。僕らの拠点を作ってくれたんだから」
「裏がなけりゃいいんだがね」
「はは」
 シンラが言いながら起き上がって制服を脱いでいるとドアがノックされる音が聞こえた。
 ベッドルームを隔てたドアの向こうからの音だったので小さかったものの、来客とあれば出ないわけにはいかない。
 ライが小走りに急いでドアを開けると、そこにはメイドのような女性が一人立っていた。
「……何か……?」
「お初にお目にかかります。私はルルーシュ様にお仕えしております篠崎 咲世子と申します。ルルーシュ様よりあなた方をお連れするようにと命じられまして」
「ルルーシュが? 少々お待ち頂けるか、片割れがまだ着替えを終えていないので」
「はい」
 そこで一旦ドアを閉めるとベッドルームへと急ぐ。
 着替えを終え、いたくシンプルな服装を身に纏ったシンラが立っていた。
「誰だ? 女みたいだったが」
「ルルーシュの使いの者だって言ってた。彼から僕達を連れてくるようにと言われているそうだけど、どうする?」
「……行ってみるか」
 咲世子に連れられて彼が待つ部屋にいくと、そこには別の人物がいた。
 車椅子に乗り、その目を閉じている少女。彼女はどうやら足と共に目も不自由なようであった。
 部屋の内装から推測するとこの部屋はルルーシュの部屋ではなく、彼女の部屋であるようだ。
 彼の趣味にしては些か女性寄りすぎると思ったからであるが、それは正解らしい。
「あら? 咲世子さん、お客様ですか?」
 可愛らしい声で咲世子に問う彼女は目が見えないというのにしっかりと顔をこちらに向けていた。
 音を捉える力が優れているらしい。驚きであった。
「はい。ルルーシュ様のお友達をお連れいたしました」
「まあ、お話に出ていたお兄様のお友達ですか?」
 その呼称から彼女はルルーシュの妹であると推測できた。
 ぱぁっと花が咲いたように表情を綻ばす彼女の笑顔を見ると、自然とこちらも表情が緩む。
 シンラは彼女の前に膝を付いて座り、同じ目線になるようにしてからこう言う。
「初めまして。私は架狩 シンラ。もう一人はライ=ロードブリティッシュだ」
「初めまして。よろしく」
「私はナナリーと申します。よろしくお願いしますね」
「来たか、シンラ、ライ」
 奥で何やら用意していたであろうルルーシュが出てきて声を掛けてきた。
「何故君に御呼ばれしたのかが分からないのだが、何か用事でもあったのか?」
「ナナリーが君達に会いたがっていたんだ。だから夕食でも一緒にどうかとね」
 どうやら彼女と自分達の話をしたのだろう。
 気を遣わせてしまったのか、と聞くと横から咲世子が「今日はお鍋ですから」と言ってくる。
 大人数で食べた方が美味しいのですよ、という言葉が非常に有難かったが、同時に家族団欒の邪魔をしてしまったのではないかという思いも芽生える。
 だが腹が減っていたのは事実で、部屋に漂う匂いが堪らなく空腹を煽ってくる。
 考えてみれば教室とかでは警戒心を拭えずに緊張していた為もあるのだろうが、ここに来てから何一つ腹に入れていない。
 願ってもない幸運。これは自分達に会いたがっていたという彼女に感謝せねばならない。
「実はこの前から何も食べていなくて凄く空腹だった。是非ご一緒させて頂きたい。なぁ、シンラ?」
「……ん? あ、ああ、そうだな」
 少々様子がおかしい事に気付いたルルーシュであったが、敢えて問わずに夕食を摂る事にしたのだった。


 その夜……。シンラとライはひたすらにパソコンに映る事柄に目を傾けていた。
 世界情勢やら何やら、この世界のことに関しては知識が無さ過ぎる為である。
 幸いにもパソコンも常備してくれたお陰で、インターネットを駆使して歴史やら最近の事柄まで検索できる。
 知識を溜め込むには丁度いいシロモノだった。
「成程……ブリタニアがこの世界における最強国家になるわけか……」
「世界の3分の1を占める超大国……現皇帝はシャルル・ジ・ブリタニア……確かに一筋縄ではいかない相手みたいだ。写真からでもオーラが伝わってくるみたいで重い気がする」
「しかし日本がエリア11とか呼ばれてるとか面倒な事になってんな……まぁ、極東の小国に軍事国家に適う力なんか毛頭なかっただろうが」
「サクラダイトについては何かわかった?」
「どうやらこのエリア11にしかない特殊な鉱物らしいな。ヒヒイロカネやオリハルコンとは別物みたいだが、メタトロンに近い鉱物らしい」
「メタトロンに?!」
「もっと詳しく成分やその他の論文とかも調べてみたいが……一般回線の検索じゃ限界があるな……専用の機関にでも行かない限り情報を引き出すのは難しいかもしれん」
「でも見た限りこの”租界”内だけでもブリタニアの息が掛かってない場所はなさそうだし……侵入するにしても、恐らく足が付いてしまうだろうね」
 面倒この上ない、とシンラの言葉に苦笑しつつも胸の中では同意をせざるを得ない。
「けどまぁ、オレらの目的はこれで一つは定まったわけだ。後は……」
 パタンとノートパソコンを閉じて彼が言う。
「……”彼女”を、探すだけだ」

 校内を把握するべくライと共に回ってみる。
 広大すぎる敷地内を回るには時間が足りないかと思われたが、差し迫って覚えなければならないという事はない。
 取り敢えず自分達が利用する可能性がある、”学業に必要な場所”だけは頭に入れておこうと思った。
 しかしながらそれを覚えるのには2時間と掛からなく、正式に編入をしたわけでもない身なので授業に必ず出席しなければならないということもない。
 時計を見れば2時限目の中腹くらいだろうと思われる。
 今から授業に参加しても中断させかねないので、そのまま学園を抜けて租界に繰り出してみようという事になった。

 そして今に至るわけだが、街は確かに『街』であった。
 何の変哲もない、『街』が目の前にある。
 少し物色も兼ねて歩いて回るが違和感もなく、これならば生活には何の支障も無いように思われた。
 ただ違うとすれば街中を軍服姿の異国人が尊大な面持ちで歩いている事と、黄色人種よりも白人種が多く歩いている事くらいだ。
「……”日本”らしくないな」
 その光景にぼそりと口に出すと、ライも同意する。
 彼もそう思っていたらしく、これが支配されることによる結果と言わんばかりの光景だと二人は口にした。
「僕らの世界でも同じような光景があったけど……こっちはまだ平和そうなのが救いだよね」
「……そうだな」
 その時、道路を挟んだ向こう側で悲鳴が聞こえた。
 反射的に顔を其方に向けると、恐らくブリタニアの将校であろう男が棒を片手に、女性を相手取って一悶着を起こしているようだった。
 自動車に気を付けながら其方に向かうと、怒号が聞こえてきた。
「貴様……! 神聖なるブリタニア人である私に恥をかかせおって!!」
 見れば軍服の胸元辺りにべったりとクリームがくっついている。
 その足元には無残にも台無しになってしまったソフトクリームが転がっていた。
 女性を見れば子供を抱えて必死に謝罪を述べているが、将校は聞く耳を持たずに女性の顔を蹴り飛ばした。
 周りから小さな悲鳴が上がるが、相手はブリタニアの軍人という事で見守るだけしか出来ずにいる。
「イレヴン如きがブリタニアを侮辱するとは許せん!! 子供もろともここで処刑してやろうか!!!」
 その言葉はあまりにも理不尽すぎる。
 苛立ちを覚えていたシンラとライは人波を掻き分けて進み始めた。
「貴様らイレヴンなど、生きる資格なぞないわ!!!」
 言いながらその棒を振り上げ、女性に向かって叩きつけようとしたその時だった。
「やめな」
 振り上げたその腕をシンラが横から掴み、その手に力を込めていく。
 ライは蹴られた女性に駆け寄ってその具合を見る。蹴られてはいるものの、痣になる程度で済みそうだ。
 懐からミニタオルを出して女性の顔に付いた泥を拭ってやる。子供には怪我はないようだった。
 一方、シンラに腕を掴まれた将校は彼を見て激昂の声をさらに上げた。
「何だ貴様は!!……ふん、アッシュフォード学園の生徒か。ガキは引っ込んでいろ、これは我がブリタニアを侮辱した罪を裁いているのだぞ!! 邪魔をするな!!」
「へーぇ? ブリタニアの軍人ってのはたかだか服を汚されただけで激昂する程器が小せえのか……そりゃあ初耳だし可哀相なこった」
「何だと……!!! この名誉あるブリタニアの……」
「名誉ある軍人だかなんだか知らねーが、テメエらが侵略した国の先住民とはいえ女子供くらいしか相手に出来ねーのかって聞いてんだよ。それともアンタが特別かい?」
「きっ、貴様……!!」
 見下すようにして嘲笑っていた表情が一変し、その鋭い眼光を向けながらシンラはさらに続ける。
「現状、あの女の人とアンタとどちらが悪モンに見えるか冷静になって見てみるんだな。状況も瞬時に理解、判断できない軍人なんか単なるカス以下だ。これ以上恥をかく前にさっさと失せな」
 そこまで言われるとようやく周りの目に気付いたようだ。
 将校は舌打ちをして一瞥くれてやると「次はない」とお決まりの捨て台詞を吐いてその場を立ち去った。
 周りに出来ていた野次馬も一人、また一人と散っていく。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
 女性は土下座する勢いでライやシンラに感謝を述べる。
「いえ、それよりも顔は大丈夫ですか? 少々痣になるかもしれませんから、帰ったらちゃんと処置してくださいね」
「わ、私の事は大丈夫です……それよりも神聖なるブリタニアの方にお助け頂けるなんて至極光栄の極みです」
 その言葉を聞くと、シンラとライは思わず言葉を失った。
 ここではもう日本という国は存在せず、”エリア11”という囲われた場所になっているということを。
 力のないものは淘汰されていくしかないのだと、この女性の存在が示している。
 自分達はブリタニアの人間ではない、と口にする事は出来ないままで女性を見送るまで複雑な笑みを浮かべていた。
 どちらから言葉を発することはなかったものの、軽い溜息の後に歩き出そうとした時にある姿を見つけてしまった。
 いや、彼らを待っていたというのが妥当かもしれない。
「シンラ! ライ!」
 名を呼んで駆け寄ってきたのは枢木 スザクであった。
 明らかに予想していなかった人間に今の光景を見られていたという事に、シンラは思わず顔を背けて何とも言いがたい表情をする。
「なんて無茶を! ブリタニア兵相手にケンカなんて!!」
「い、いや……ちょっと女性相手に理不尽すぎた対応をしてたから……すまない、軽率だった」
 あまりの剣幕に圧されながらも、二人は取り敢えず謝っておくことにした。
 近くにいたわけじゃなかったので自分達の言葉には気づいていないようであったが。
 そこで今更であるが、スザクの服装が学園の制服でないことに気付く。
 そのいでたちからすれば、まるで、
「……軍服?」
 ぽつりと口にするとスザクははっと気が付いて二人から少々間を取る。
「あ、ごめん。今丁度仕事場に戻る所だったんだ……あ、二人にはまだ話してなかったんだよね。僕は軍で仕事をしているんだよ」
「成程、だから”学校に行ってなかった”のか」
「はは……それよりも二人はここで何を? 今日は授業があったんじゃないの?」
「強制されているわけじゃないから、情報を集めようと思った。先日ルルーシュに案内された時は生活に必要な店とか移動手段の知識しか得られなかったからな」
「そうだったんだ……これからまた何処かに行くのかい?」
「ああ、”シンジュクゲットー”に」
 それを聞くと途端にスザクの表情が険しくなった。
「……あそこには、行かないほうがいい」
 声にも厳しさが篭っている。
「シンジュクゲットーは少し前に起きた戦闘で悲惨な状態で……今はブリタニア軍が睨みを利かせているんだ」
「戦闘? 租界にはそんな危険な場所があるのか?」
「最近になってテロリストが現れたんだ。君達はまだ知らないだろうけどね」
「テロリスト……か」
「前はそんなに酷くも無かったんだけど、この前の戦闘でもう人が住める場所じゃなくなったんだ……ようやく人が戻りかけていた所でまた戦闘が起きたから。だからその影響もあってシンジュクゲットーには厳戒態勢が敷かれている。君達が行っても追い返されるか、テロリストと判断されて連行されてしまうかもしれない」
 スザクの話には嘘がないように思えた。
 その目が悲しみと落胆に満ちていたお陰もあるのだが、それ以上に彼が嘘をつくことでメリットを見出すような人間に思えなかったからである。
「それなら尚更の事、私達はシンジュクゲットーに赴かねば」
 だがシンラはそうまで言われると自分の中に芽生える好奇心とは違う感情に動かされ、スザクにこう言っていた。
「でも……!」
「見ておきたいんだ。この世界に何が起きているのかっていうその現状を」
 その瞳に揺らぎはない。恐らく自分ががいくら止めようとも、この調子ならば彼らは目を盗んででも行くはずだ。
「……分かった。でも軍の人に見つかっても大丈夫なように、行くなら僕も一緒に行くよ」
「免罪符?」
「身の保証ってやつだよ。僕は一応軍の人間だから一緒にいれば取り敢えずは怪しまれないはずだから」
 シンラとライはお互い言葉を交わす事はなかったが、スザクの言葉にどこかズレを感じていた。
 それは少々胸に引っかかる、というような程度のものであった。しかし確実に脳裏に残る疑問となる。
 シンジュクゲットーへ向かう途中、やはり街中を歩いていかないとならない。
 その最中に住宅街も勿論通ることになるのだが、何度か人とすれ違う中でスザクの姿を見た住人がひそひそと小声で話しているのが見受けられた。
 其方を向くことなく耳を傾けてみたが、聞こえてきたのは気のいい言葉では無かった。
 同時に向けられるその突き刺さるような視線。

「名誉ブリタニア人の枢木 スザクよ……」

 名誉ブリタニア人。領土を支配され、国籍を失った日本人は役所に申請さえすればブリタニア人として認められるという制度である。
 要は、日本人という肩書きを捨てて、敵国である支配国の国民になるという事。
 スザクを見て嫌気を向けてくるという事は、彼らは日本人なのだろう。
 名誉ブリタニア人であり、そのブリタニアの軍人であるという事は日本そのものを裏切ったと捉えられているのかもしれない。
「僕の事は気にしないで。大丈夫だよ」
 此方の気を察知したのか、彼は笑いながら言った。
 しかしその表情には、やはり悲しさが浮かんでいるように思えた。

「……ここがシンジュクゲットーだよ」
「……これは」
「酷い……」
 生々しい戦闘の跡だった。
 閑散とした道路には実弾が当たって崩壊したビルの一部、機械の破片、足元には黒く残る血溜まり、倒壊してしまっている建物、辺りに立ち込める硝煙の臭い。
 目の当たりにすると思った以上の惨状にシンラとライは思わず声を上げた。
 スザクの話によればこのシンジュクゲットーの戦闘では一般人も多く巻き込まれたらしく、復興に向けて動き出していたすべてが水の泡になったという。
 支配下の中でも身の保証があれば生きていく力は人間にはあるもので、尊厳を問われる事にはなるだろうが、それでも人が街に戻ろうとしてた所での戦闘とはあまりいい気はしない。
 テロリスト。自由の為に戦う為にブリタニアに反旗を翻した者達。
 意地のぶつかり合い、というだけでは済まないが、本当に死と隣り合わせの所にトウキョウ租界は存在しているのだと思い知らされた。
「しかし、復興の目処はついていないのか? 戦闘があってもまた立て直す事が出来るものだと思っていたが……」
 ライの問いにスザクの表情はさらに悲しそうに歪む。
「このシンジュクゲットーにはテロリストのアジトがあるかもっていう話があるんだ。だから手をつけられていないっていうのが現状かな……これ以上は軍関連になるから詳しくは教えられないんだけど」
「いや……大方は理解できた……確かに戦闘がいつ起きてもおかしくない状況なら復興になぞ手をつけられるわけがないな。人が疎らにいるのは、ここの元住民か?」
「……まぁ、うん……残っている人は他に行きようが無い人たちだと思う。こんな状況になってても、ここが家だって言う人も少なくないからね。勿論避難勧告は出してるんだけど……」
 人は住み慣れた場所を離れたくないという意識が強い者もいる。
 それも侵略をされ、奪われた日常が其処にあったというならば尚更の事離れ難いのだろう。
 これは『国を奪われた日本人としての小さな反抗』の表れであるのかもしれない。
 どれだけ不毛のサイクルを生み出そうとも、根本を覆すのは軍事力だけでは無理だという表れでもあるのかもしれない。
「……そろそろ帰ろうか。スザク、我侭を聞いてくれてすまなかったな」
 ライが場の空気を断ち切るようにして言うと、スザクは悲しさを残したままの笑みを此方に向けてくる。
「……いや、いいよ。僕が力になれる事があったら何でも言ってね」
 その言葉が、少しだけ胸に刺さった気がした。

 その夜、自室に戻ってきた二人は言葉を交わすことなくすぐに布団に潜り込んだ。
 スザクとは帰る途中で別れ、シンラとライはそのまま租界中を歩いて回ったお陰もあり、身体が疲れきっていた。
 だが、眠ることなく、静かに横になっていただけだった。
 沈黙が部屋に訪れる中、口を開いたのはシンラだった。
「……なぁ、歴史は変わると思うか?」
 その言葉にライは溜息を吐いてからこう返す。
「……変わってると思うよ。僕らがこの世界に来てから、確実にね」
「……嫌な変わり方じゃない事を、願いたいもんだ」
「そうだね……」

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