最近そういうのなくなったなぁ……それだけ皆様の絵が完成されてるものだから萌えが完成されちゃってる感じとでも言えば伝わるでしょうか(笑)
まぁ、そんなこんなで駄文に行きます。
これもライルルかな? ブルームーン前提でライルルで。
んでもって前回同様ツンデレじゃなく、乙女化ルルーシュでお送りいたしますとも!←
だってそっちの方が好きなんだもん! BGMが美女と野獣なんだもん!!(笑)
野獣はどっち?という質問そんなもの聞かずとも!って事で←
ではではつづきからどうぞ。
case:2
夢を見ていた。
いつものように見る魘されるようなものではなく、自分は何処か大きく、そして深い森の中に立っていた。
不思議とその場に流れる空気は鬱蒼と茂る森から想像されるような不快なものではなく、何処か懐かしくもあり、また胸を締め付けられるようなそんな空気だった。
僕は自分が何故にこの場所に立っているのかを考えてはみたが、そんな疑問など夢の中においては愚行に等しいことなのだろう。
当てもない夢の中だ。歩き回ってみるだけ歩いてみようかと歩み始める。
この光景は何処かで見たことがある。
そうだ、日本の風景を纏めた写真集の中にあった”ヤクシマ”という場所に酷似している。
大きな老樹が聳え立つその写真には目を奪われた。
脳内にこびり付く強烈なイメージがこうやって夢に現れるというのは良く聞く話だと、夢見が悪いとミレイさん達に相談した時に聞いた。
心に抱えているものも、現れるのだと。
いつものように見る悪夢のようなあの『夢』も、僕の脳内に深くこびり付くイメージなのだろうか。
どこまでも続く森、歩けども終わりは見えない。
けど、不安はなかったんだ。
降り注ぐ陽の光、吹き抜ける柔らかな風、葉ずれの音、香る花、喉を潤す水のせせらぎ。
それらが、僕の心を不安から遠ざけてくれる。
前に進むことを、揺るがせない。
そうしていつの間にか森は僕の背後に、目の前には奈落が広がっている。
これは僕の不安の象徴だ。直感でそう感じた。
後ろを振り返って森を眺める。大きくて、深い森だ。
多分、僕はそこに『漬かりきって』はいけない存在なんだろう。
だから行かなきゃならない。そう僕の中に居る『存在』が警告のように直感として働くのかもしれない。
この奈落は、落ちるべき奈落なのだろう。
だからこそ僕は迷わず地を蹴り、奈落へと落ちた。
さよなら、と一言だけでも告げたかったな。
僕の後悔は、謝罪となり得るのだろうか?
すべてが暗闇に沈んだと思った瞬間に、手に触れる感覚で目を開けた。
そこにはルルーシュが居た。
見覚えのない天井が目に入る。どうやら僕は病院に運ばれたようだった。
僕は、特区成立の為の式典で、ギアスに掛かったユーフェミアに撃たれた。
そして渾身の力をこめて放った上書きのギアスの反動と流れ出た血から意識を失ったのだった。
様子がおかしい、とは思った。何が、と思っていると向かって彼の右の目が明らかに人のものではないモノに変化していることに気付く。
瞳に浮かぶのは紋章。ギアスの紋章。
「ルルーシュ……?」
「怪我人は楽にしていろ」
起き上がろうとしていた僕は彼に言われた瞬間に、ふっと身体から力を抜いた。
「……ユーフェミアがあんな状態になったのは、やはり君が原因か」
「ああ。俺自身はまったくギアスをかけたつもりはなかったんだが」
「暴走、か」
「……ああ。しかしお前が上書きをしてくれたお陰で事なきを得た。C.C.も驚いていたぞ、お前の力に」
「……そうか……誰も死なず、誰も傷つかなかったか。良かった……」
「犠牲は、お前が払った」
彼の手が僕の手に重なる。
「………………すまなかった……っ」
俯いて搾り出すような声に、その肩を抱いてやりたくなるほどに愛しく思えた。
受けた銃弾の所為で動けない身体が恨めしい。
「……ルルーシュ」
「俺は、お前が居なくなったらどうすればと何度も考えた。
だがどれだけパターンを想定しても行き着く先に俺の望む結果が得られない。
お前が欠けてしまうだけで、すべてが狂ってしまう」
重ねられた手が震えている。
僕は頭をフルに動かしてどうすればいいのかと考えていた。
おかしなものだ。
こういう時こそ感情のままに彼に気持ちを伝えればいいだけなのに、そこに演出でも加えようとしているのか。
どうやらこの『世界』に目覚めて以来、短い時間の間に体験した様々出来事の中で一番際立ち、色々な意味で濃密な時間を一緒に過ごしてきた彼に大きな影響を受けたらしい。
僕の思考は常に『ゼロ』の満足のいくように、そして『ルルーシュ』を満たす為に働くようになっていたようだ。
だからこそ僕は身体を起こしたかったのだけれど、それはどうしても叶わない。
軽い溜息の後に、僕は重ねられた手を握り返した。
これは僕の意思表示でもある。
「僕が生きる理由は、君が居るからだ。
誓いがあるからじゃない。僕は君と共に在りたい。
僕の世界には、君が必要なんだ。…………君が僕の世界の中心なんだからね」
多少の『演出』は必要だろう?
少々意地の悪い思惑を心に灯しはしたけど、これは本心だ。
僕の世界は彼そのものなんだと。
そして、疑わないこと。
暗黙のうちに交わす誓約は、僕らを繋ぐ絆を強固なものに変える。
彼は僕が横たわるベッドに乗り、ぎし、と軋み、次の瞬間には僕の身体は彼に抱かれていた。
安堵と愛しさがこみ上げてくる中、僕も彼を抱きしめ返す。
どれだけの時が過ぎたかはわからないけど、誰かが入ってくるまで僕らは抱き合っていた。
誰かがしたノックの音に、その時の僕らの慌てようは凄まじかった。
数秒で離れ、ルルーシュは仮面を被り、僕は平静に横になって怪我人を演じる。
不自然になることがないのは、多分僕らだから出来ることであるわけだが、恐らくゼロの仮面の下は散々なことになっているのかもしれない。
入ってきたのは扇さん達で、どうやら見舞いに来てくれたらしかった。
先客がゼロだったという事に驚かれたが、すぐに和やかなムードに変わる。
彼は仕事がある、と先に出て行ってしまったが、怪我が治ればすぐに僕にもお呼びが掛かるだろう。
特区成立後は、今まで以上に忙しくはなりそうではあるものの、血生臭い出来事は起きはしないはずだ。
何故なら、僕と彼が居れば大方の問題はクリア出来る。そう彼に断言された。
彼は奇跡を起こす者。
そして僕は彼の為に奇跡を引き寄せる駒。
その役割は誰にも渡さないし、譲る気はない。
ただ、今は少しだけの休養をとりたい。
生きている、生きて彼の元に居る、彼と共に歩める嬉しさを噛み締めたい。
それまでは、おやすみ。
case : 2 と あ る 王 の 休 息